種分化と進化の実体4

(以下の記事は 進化論と創造論についての第1掲示板での[ユッキーさん]とのやりとりを加筆,修正したものです)

 

[ユッキーさん]それは進化論者が解釈しているだけでしょ、
        生物が生活していれば種が変化して行く事など当たり前
        のように分かります、 
        進化論がその変化でも進化とゆうなら
        それでいいでしょう、

        でもそこまででしょう、
        種を超える大きな変化が見られるのでしょうか?
        

「進化論者が解釈しているだけ」もなにも,
進化論者以外の誰が進化を定義できるのですか?
ユッキーさんが思い描く『進化』は現実に起こり得ませんが,
そのことと進化論とはなんの関係もないでしょう

 

もちろん,進化の結果として『種を超える大きな変化』も見られます
ミケさんが3回も同じこと(『生物学的種概念における種A→種Bという観察事例』)を書き込んだのを忘れたのですか?


「形態的種」で良ければ,
イヌの品種間の形態の違いは,属レベルに匹敵するかもしれません
>イヌの品種
>
> どんなイヌを見ても、みなイヌだとはわかるのだが、犬種ごと
>の違いは大きい。中でも小型犬から大型犬まで、大きさがすごく
>違う。小型犬の代表のチワワの体重は、1.5キロから3キロぐらい
>だそうだが、超大型犬のロットワイラーは50キロ、セントバーナード
>やイングリッシュ・マスチフにいたっては100キロまでにもなるという。

長谷川 眞理子.イヌの起源(2020.02.14) 進化生物学者がイヌと暮らして学んだこと.せかいしそう.世界思想社のwebマガジン

>犬種210種類まとめ!
(pepy ペットライフを楽しくする情報メディアHP)

>Ⅱ-7 イヌ —— 日本とアジア犬種の系統

 

 

 

[ユッキーさん]ところで日本人って昔に比べて体型が変わりましたよね、
        肥満児、長身が多くなったのも進化と言えるのでしょか?

 

『昔に比べて』というのが,
第2次大戦後の体位の向上のこと』をさしているのなら,
これは,主として食生活や生活習慣の変化などによるものであり,
集団の『遺伝的な変化』ではないので,進化現象とは考えられません

>戦前における国民の体位、特に
>青少年
の体位は、保険衛生の
>進展或いは社会
環境の改善に
>伴って逐年向上し、大正
末期
>から昭和初期にかけての上昇
>が
めだち昭和2~14年ごろ
>には身長、
体重などすべて
>戦前の最高水準を
示した。
>しかし昭和15年頃からは

>食糧事情の窮迫と生活環境の悪化をうけて国民の体位は急速に低下し、
終戦直後に実施した昭和22年に実施した国民栄養調査による身体計測
>の結果
では驚くべき体位の減退が明らかにされた。さらに昭和24年頃
>からは青少年
の体位の回復が目覚ましく昭和27,28年頃にはおゝむね
>戦前の水準まで
達し、その後も栄養摂取水準の上昇に伴って体位も順調
>に伸びつゞけてきた。

国民栄養の現状.昭和36年度国民栄養調査成績.厚生省公衆衛生局栄養課

 

 

ヒトの世代時間から考えて,わずか数十年で集団の遺伝子頻度が
大きく変わるとは考えられません
また,肥満者,長身者の適応度を高める(より多くの子孫を残す)
ような大きな淘汰圧も認められません

世代時間の短いコナガが殺虫剤の散布という強い淘汰圧によって
耐性を獲得したのとはわけが違います
(ちなみに,コナガの世代時間は気温によって変わり,
 北海道で年5世代,関東地方で年10世代,南九州で年12世代,
 インドネシアで年19世代繰り返すと推定されています)

 

もちろん,ヒトの体位には遺伝的な影響もあり,
各民族集団の平均的な体位には遺伝的要因も関わっています
そのような民族集団ごとの遺伝的な特性をもたらしたものは
「進化」だといって良いでしょう

 
しかし同時に,体位は成長期までの栄養状態と密接な関係があります
数十~百年単位の急激な体位の向上や低下は,
世界各地で起こっていますが,
これらは栄養状態に依存するものであり,
進化とは分けて考えるべきでしょうね

 

北朝鮮と韓国では成人男子の平均身長で7cmも違いますが,
これも栄養状態の違いによるものでしょう
(成長期に食糧難を経験した年齢層ほど差が大きいという
 報道もありましたね)
2000年以降、韓国に入国した20~60歳の脱北者1200人を対象にした調査の
>「調査対象者の体格をみると、男性167センチ(韓国人の平均は174センチ)、
>女性156センチ(同160.5センチ)と韓国人平均に比べ、小さいことが明らかに
>なった。」(毎日新聞2011.1.20)(図録
2190参照)やはり長期間にわたる
>南北の摂取カロリーの違いの影響は大きい(図録
0200参照)。

honkawa2.sakura.ne.jp

>【北朝鮮特集】10代男子の平均身長150センチ  (2004/02/18(水))
>慢性的な栄養失調が、子どもたちの発育に大きな影響を及ぼしていることが
>分かった。 韓国と北朝鮮の国力に差のなかった時代に成長期を過ごした
>40代では、南北住民の体格はほとんど同じだが、1990年代中盤の深刻な
>食糧難を経験した20歳以下の世代では、韓国との間に大きな差が出た。

【北朝鮮特集】10代男子の平均身長150センチ - NNA ASIA・韓国・


 

ヨーロッパ人も19世紀前半までは170cm以下(成人男性)でしたが,
現代では175cm以上に増加しています
これらの現象も『進化』(=『集団の遺伝的な変化』)というよりは,
『栄養状態の改善による変化』だと解釈されていますね
>1825年の成人男性の平均身長
>フランス   164.5cm
>イギリス   168cm
スウェーデン 167cm
デンマーク  165cm

(Robert W. Fogel 1989. Second Thoughts on the European Escape from Hunger: Famines, Price Elasticities, Entitlements, Chronic Malnutrition, and Mortality Rates. NBER Working Paper 1.)より
現代の成人男性の平均身長
>フランス   176.4cm
>イギリス   178.1cm
スウェーデン 179.6cm
デンマーク  181.5cm

世界の平均身長