種分化と進化の実体5

(以下の記事は 進化論と創造論についての第1掲示板での[ユッキーさん]とのやりとりを加筆,修正したものです)

 

[ユッキーさん]別種だけど人と交わり子孫を残すことが可能とゆう話は
        理解し難いので、
        もしそうならその過程をザッパで結構ですので、
        お聞かせください、


化石種において「別種でも子孫を残す」ことができる可能性があります
なぜなら,『進化の実体2』で書いたように,
化石種とは『形態的種』であり,生殖隔離を基準にした,
『生物学的種』とは別の概念だからです

 「化石種」はすべて「形態的種」によって分類されているので,
>「『化石種』に見られる進化」とは「形態的種」の進化です

>実際の生物集団としては,第1と第2の種の定義が
>ほぼ一致することも少なくないのですが,
>例外も多いので,概念としては別物と考えた方が良いでしょう

 

ホモ・エレクトゥスHomo erectus集団から,
ネアンデルタール人Homo neanderthalensis集団が分岐した時も,
ヒトHomo sapiens集団が分岐した時も,
これらの形態種間で生殖隔離が生じていたかどうかは不明としか言えません

しかし,形態的種としてのヒトHomo sapiensと,
ネアンデルタール人Homo neanderthalensis
同時代に共存していたにもかかわらず,
それぞれの形態的特徴を保っていました
自然状態では両種の交雑はまれにしか起こらなかったと推測されます

 

現生種でも
マガモAnas platyrhynchosオナガガモA. acutaカルガモA. poecilorhyncha
イエズズメPasser domesticusとスペインスズメP. hispaniolensis
ヒグマurasus arctusホッキョクグマU.maritimusは交雑可能ですね

(時国公政. 1989. マガモとオナガガモの雑種個体の観察. Strix 8: 286-287.)

>マガモとカルガモの雑種 嘴をはじめ、上面の体色や明瞭な過眼線は
>カルガモ的だが、胸の赤みや体下面の灰褐色、眼後方の緑色等は
>マガモを示唆している。
(カモの変り種2007-02-14 18:31:25 | 鳥キチ日記)

(Richard F. Johnston(1969)Character Variation and Adaptation in European Sparrows.Systematic Zoology:18(2). 206-231.)

>Grizzly-polar bear hybrid
(From Wikipedia, the free encyclopedia)

 

実際には,これらの『交雑可能な別種』(形態的種)は,
遺伝的な不和合性のような生理的な障壁とは別の機構で「生殖隔離」され,
同処性の個体群でも,自然状態では交雑はまれにしか起こりません
このように「形態的種」が保たれているということは,
遺伝子の交流に制限がある可能性を示しているということです

 

しかし,形態的種の違いは「遺伝子の交流の制限」を示しているものの
(逆に形態的には区別できなくても遺伝的に隔離されている場合もあります
(=同胞種))
その違いが生殖隔離によるものか地理的な隔離によるものかは区別できません

 

例えば,ニホンザルとタイワンザルの場合も
たまたま人為的な移入があったせいで,
生殖隔離がなかったことが明らかになっただけで,
もし,地理的に隔離されたままだったら,
生殖隔離があろうがなかろうが,両集団の遺伝子交流は制限されていたのですから

 

つまり,生殖隔離を基準とした『生物学的種』(第1の定義の種)は
異処性の個体群間では判断できないということです