種分化と進化の実体8

(以下の記事は 進化論と創造論についての第1掲示板での[ユッキーさん]とのやりとりを加筆,修正したものです)

 

もうすでにたくさんの例が紹介されているんですよ

[ユッキーさん]今まで紹介して頂いた例は全部、覚えてますが、
        1年も経てば忘れるでしょう、
        つまり何も印象に残らない徴の薄い例という訳です、
        例えば最新のネズミ情報など
        巷の人がどれだけ理解できるでしょうか、
        それらのネズミが進化の証明になると言われても、
        「?」なんで?が普通でしょうね

 

ユッキーさんの印象に残らなかったり,理解できなかったりしても,
『ない』ことにはなりませんよ
全哺乳類の2/5以上が日本語では『ネズミ』です
「できれば,哺乳類で」とリクエストしておいて
「ネズミは進化の証明にならない」
なんて駄々をこねてる子供にしか見えません

 

>>「生殖隔離」だけを基準とすると,
>>シロアシネズミの集団は隣合う集団同士は「同種」ですが,
>>両端の集団同士は『別種』となってしまいますよ
[ユッキーさん]隔離なんて重要視した覚えはありせん、
        そのシロアシネズミは両端の集団と繁殖できるのでしょ、
        種の定義は繁殖可能で正常な子孫を残せる種の事だけ、

 

シロアシネズミの両端の集団同士は繁殖できないのですよ
(輪状種の説明のところでと書きました)

 

それから,「生殖隔離」の意味を誤解していませんか?
「生殖隔離」がないからこそ
「繁殖可能で正常な子孫を残せる」のですよ

「種の定義は繁殖可能で正常な子孫を残せる種の事だけ」
というのと
「「生殖隔離」だけを基準とする」のは同じことなんですよ
以下の『隔離の問題ではありません』の意味が,私には理解できません

 

[ユッキーさん]早い話、全部、正常な子孫を残せたら同種だと思います、
        そうじゃなかったら別種じゃない、
        ただし隔離の問題ではありません、

 

結局,ユッキーさんは「どの程度繁殖可能で正常な子孫を残せれば」
同種と認めるのですか?

『輪状種』を形成しているシロアシネズミの集団のように,
隣の集団同士は繁殖可能でも,両端の集団同士では繁殖できない場合は
どこに種の境目を引くのですか?

バンテンと家畜牛のように,雑種の雌にしか繁殖能力がない場合はどうですか?

北米のヒグマとホッキョクグマのように,
普通は交尾しないので雑種ができることはめったにないけど,
できた雑種には正常な繁殖能力がある場合はどうですか?

 

>>人間が名前を変えなければ、その種は同じ名前のままですよ
[ユッキーさん]新しく付けた名前なら判りますが、人が名前を変えた、
                       「変えた」物って人為的に作りだした物以外になにかあるの?

 

たくさんありますよ
種を細分化しようとする細分主義者と
細分化された種を一つにまとめようとする統合主義者は常に対立しています

リンネが記載したイノシシSus scrofaを,
> 細分主義者のライデッカーがヨーロッパイノシシSus scrofa、
>アジアイノシシSus vittatus、ニホンイノシシSus leucomystax
>などに細分した。
ユーラシア大陸のイノシシを、エラマンとモリソンスコットが
>一種に統合したのも、ヨーロッパイノシシとアジアイノシシを
>家畜化したと推定される2系統のブタが、自由に交配してなんの
>支障もなく子孫を残している事実を重視したタメであろう。
>たしかにブタには類骨の形状を異にする2つの系統がある。
>この違いはヨーロッパ系のイノシシと東アジア系のイノシシを
>別々に家畜化したために生じたらしいが、
>今ではこれらの品種は複雑に混じりあって、二種には分解できなく
>なっている。これではブタを単一の種と見るしかないだろう。
>だが家畜のブタが分割できないからといって野生のイノシシまで
>統合するのはどんなものだろうか。人為の加わった家畜種と
>野生種を一緒にすると、生殖隔離の有無が分からなくなり、
>分類が混乱してしまう。
(p.21-22.分類から進化論へ.今泉吉典 (著) .平凡社 (1991/06)

現在は,ヨーロッパイノシシSus scrofa scrofa,アジアイノシシSus scrofa uittatiis,ニホンイノシシSus scrofa leucomustax,インドイノシシSus scrofa cristatusなどと書く人が多いですね

 

野外での生殖隔離の有無を確かめるべきだとした
マイヤーの考えとも合致しないので,
人為の加わった家畜種と野生種を一緒して統合することには,
反対意見もあるようです
この理屈でいくと,アジア家畜牛Bos indicusとヨーロッパ家畜牛Bos taurusも
統合されてしまうかもしれませんね

 

ホッキョクグマUrsus maritimusとして記載されたのですが,
ヒグマ属Ursusとの形態的な違いを重視して,
ホッキョクグマ属Thalarctosを立ててThalarctos maritimuscとする
考えが提唱されました
最近はヒグマとの近縁性を重視して,Ursus maritimusとすることが
多くなりましたが,
古い図鑑とかだとThalarctos maritimusという記載が多いですよ

例えば,私の手元にある1960年発行の
原色日本哺乳類図鑑 (保育社の原色図鑑 7/著者:今泉吉典)),
でも,ホッキョクグマの学名はThalarctos maritimusになっていますね

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ちなみに,
なんで『日本』哺乳類図鑑にホッキョクグマが載っているかというと,
上記のように,
日本(北海道の宗谷と本州の新潟)で採集された記録があるからです