自然選択と遺伝的浮動2
(以下は,進化論と創造論についての第1掲示板での[神って誰さん]への説明を加筆,修正したものなんですが,[神って誰さん]は結局分からず終いでした)
次はs(淘汰係数)とu(突然変異遺伝子の固定確率)の関係についてです
実際に,u=[1-exp{-(2Nes)/N}]/[1-exp(-4Nes)] に
数値を入れて計算してみましょう
N=1000,Ne=960の集団について,
上の式にsの値を入れてuを計算してみました
s | u | 2s | 2sNe/N |
0.000001 | 0.0005009601 | 0.000002 | 0.00000192 |
0.00001 | 0.0005096565 | 0.00002 | 0.0000192 |
0.0001 | 0.0006020712 | 0.0002 | 0.000192 |
0.001 | 0.0019602917 | 0.002 | 0.00192 |
0.002 | 0.003834408 | 0.004 | 0.00384 |
0.003 | 0.0057435 | 0.006 | 0.00576 |
0.004 | 0.0076505858 | 0.008 | 0.00768 |
0.005 | 0.0095540671 | 0.01 | 0.0096 |
0.006 | 0.0114538989 | 0.012 | 0.01152 |
0.007 | 0.0133500865 | 0.014 | 0.01344 |
0.008 | 0.0152426369 | 0.016 | 0.01536 |
0.009 | 0.0171315571 | 0.018 | 0.01728 |
0.01 | 0.019016854 | 0.02 | 0.0192 |
0.011 | 0.0208985347 | 0.022 | 0.02112 |
0.012 | 0.0227766059 | 0.024 | 0.02304 |
0.013 | 0.0246510748 | 0.026 | 0.02496 |
0.014 | 0.0265219481 | 0.028 | 0.02688 |
0.015 | 0.0283892328 | 0.03 | 0.0288 |
0.016 | 0.0302529358 | 0.032 | 0.03072 |
0.017 | 0.0321130638 | 0.034 | 0.03264 |
0.018 | 0.0339696239 | 0.036 | 0.03456 |
0.019 | 0.0358226227 | 0.038 | 0.03648 |
0.02 | 0.0376720673 | 0.04 | 0.0384 |
計算結果を2sおよび2Ne/Nと比較したのが上の表でグラフ化にするとこうなります
この結果から
1.sの値を小さくしていくと(突然変異が中立になっていくと),
uは一定の値(0.0005)に近づいていく
2.sの値がある程度以上になると(突然変異が有利になると),
uは2sNe/Nに近くなることが分かりますね
また,この集団の場合は,Ne/N=0.96なので,
uは2sで近似できることも分かるでしょう
グラフ上にu=2sの直線も示していますが,
右側のプロットはほぼ直線上に乗っていますよね
次は,N=1000,Ne=587の集団について,同様の計算をした結果です
s | u | 2s | 2sNe/N |
0.000001 | 0.0005005669 | 0.000002 | 0.000001134 |
0.00001 | 0.0005056886 | 0.00002 | 0.00001134 |
0.0001 | 0.0005588097 | 0.0002 | 0.0001134 |
0.001 | 0.001264229 | 0.002 | 0.001134 |
0.002 | 0.0022899698 | 0.004 | 0.002268 |
0.003 | 0.0033999915 | 0.006 | 0.003402 |
0.004 | 0.0045262477 | 0.008 | 0.004536 |
0.005 | 0.0056540231 | 0.01 | 0.00567 |
0.006 | 0.0067809135 | 0.012 | 0.006804 |
0.007 | 0.0079065783 | 0.014 | 0.007938 |
0.008 | 0.0090309737 | 0.016 | 0.009072 |
0.009 | 0.0101540955 | 0.018 | 0.010206 |
0.01 | 0.0112759446 | 0.02 | 0.01134 |
0.011 | 0.0123965221 | 0.022 | 0.012474 |
0.012 | 0.0135158297 | 0.024 | 0.013608 |
0.013 | 0.0146338687 | 0.026 | 0.014742 |
0.014 | 0.0157506406 | 0.028 | 0.015876 |
0.015 | 0.0168661468 | 0.03 | 0.01701 |
0.016 | 0.0179803886 | 0.032 | 0.018144 |
0.017 | 0.0190933677 | 0.034 | 0.019278 |
0.018 | 0.0202050854 | 0.036 | 0.020412 |
0.019 | 0.0213155431 | 0.038 | 0.021546 |
0.02 | 0.0224247422 | 0.04 | 0.02268 |
この場合も,結果は先ほどの例と同じですね
1.sの値を小さくしていくと(突然変異が中立になっていくと),
uは一定の値(0.0005)に近づいていく
2.sの値がある程度以上になると(突然変異が有利になると),
uは2sNe/Nに近くなる
ただし,この集団の場合,Ne/N=0.587なので
uは2sでは近似できませんが……
要するに,突然変異が有利な場合はuはsに比例しますが,
中立の場合はuはsとは無関係になるということです
それでは,突然変異が中立な場合にuが何によって決まるかというと,
それは「集団の大きさ」なんです
実は上の2つの例で,
sの値を小さくしていった時に近づいていく値,0.0005というのは,
1/(2N)=1/(2*1000)=0.0005なんですよね
本当かどうか,実際に集団の大きさ(個体数N)を変えて計算してみましょう
まず,sが非常に小さい場合(s=0.000001)と仮定します
Ne/N=0.96の集団について,Nの値を変えてuを計算してみました
N | u | 1/(2N) |
100 | 0.0050009553 | 0.005 |
200 | 0.0025009577 | 0.0025 |
300 | 0.0016676253 | 0.0016666667 |
400 | 0.001250959 | 0.00125 |
500 | 0.0010009593 | 0.001 |
600 | 0.0008342929 | 0.0008333333 |
700 | 0.0007152455 | 0.0007142857 |
800 | 0.0006259599 | 0.000625 |
900 | 0.0005565156 | 0.0005555556 |
1000 | 0.0005009601 | 0.0005 |
1100 | 0.0004555057 | 0.0004545455 |
1200 | 0.000417627 | 0.0004166667 |
1300 | 0.0003855758 | 0.0003846154 |
1400 | 0.0003581034 | 0.0003571429 |
1500 | 0.0003342939 | 0.0003333333 |
1600 | 0.0003134607 | 0.0003125 |
1700 | 0.0002950784 | 0.0002941176 |
1800 | 0.0002787386 | 0.0002777778 |
1900 | 0.0002641188 | 0.0002631579 |
2000 | 0.000250961 | 0.00025 |
uの値が1/(2N)とほぼ一致していることが分かりますね
Ne/N=0.587の集団についても同様です
N | u | 1/(2N) |
100 | 0.0050005841 | 0.005 |
200 | 0.0025005856 | 0.0025 |
300 | 0.0016672528 | 0.0016666667 |
400 | 0.0012505864 | 0.00125 |
500 | 0.0010005865 | 0.001 |
600 | 0.00083392 | 0.0008333333 |
700 | 0.0007148725 | 0.0007142857 |
800 | 0.0006255868 | 0.000625 |
900 | 0.0005561424 | 0.0005555556 |
1000 | 0.0005005869 | 0.0005 |
1100 | 0.0004551324 | 0.0004545455 |
1200 | 0.0004172537 | 0.0004166667 |
1300 | 0.0003852025 | 0.0003846154 |
1400 | 0.00035773 | 0.0003571429 |
1500 | 0.0003339205 | 0.0003333333 |
1600 | 0.0003130872 | 0.0003125 |
1700 | 0.0002947049 | 0.0002941176 |
1800 | 0.000278365 | 0.0002777778 |
1900 | 0.0002637452 | 0.0002631579 |
2000 | 0.0002505873 | 0.00025 |
やはり,uの値は1/(2N)とほぼ一致します
つまり,突然変異が中立に近い場合,
その固定確率は集団の大きさにほぼ反比例するということですね
突然変異遺伝子が固定する『確率』は,
集団が小さい方が大きくなるということなんですよ
一方,集団中に出現する突然変異の個数は個体数Nに比例しますから,
集団が大きいほど多くなります
置換率は両者の積なので分母子で打ち消し合って,
集団の大きさとは関係なくなるというのは既に説明しましたよね
>もし,突然変異が中立であるなら
>淘汰係数s(野生型対立遺伝子に対する有利さ)は0だと考えられるので,
>uは(2)式のs→0の極限値となり,
>u =1/2N ─(3)
>これは「新しい遺伝子が個体数Nの集団に出現した時の初期遺伝子頻度」
>p=1/2N とも等しくなります
>ここで(3)を(1)に代入すると,
>k=2Nv・(1/2N)=v ─(4)
>となります
>この式は
>中立な突然変異の遺伝子置換率kは,
>1遺伝子座あたりの突然変異率vと等しくなるということを表しています
一方,突然変異が有利な場合は,uは2sNe/Nに近似できそうだ
という計算結果が出ていましたよね
集団の大きさ(個体数)を変化させて確認してみましょう
ここで,s=0.02(2%有利だ)と仮定します
この条件で,Ne/N=0.96の集団について,
(つまり,2sNe/N=0.0384の集団について)ね
Nの値を変えてuを計算してみました
N | u |
10 | 0.0702758437 |
20 | 0.0480045922 |
50 | 0.0384995615 |
100 | 0.0376894789 |
200 | 0.0376720753 |
300 | 0.0376720673 |
400 | 0.0376720673 |
500 | 0.0376720673 |
600 | 0.0376720673 |
700 | 0.0376720673 |
800 | 0.0376720673 |
900 | 0.0376720673 |
1000 | 0.0376720673 |
1100 | 0.0376720673 |
1200 | 0.0376720673 |
1300 | 0.0376720673 |
1400 | 0.0376720673 |
1500 | 0.0376720673 |
1600 | 0.0376720673 |
1700 | 0.0376720673 |
1800 | 0.0376720673 |
1900 | 0.0376720673 |
2000 | 0.0376720673 |
グラフを描くまでもなく,
Nが十分に大きければuが2sNe/N=0.0384で近似できるのが分かるでしょう
Ne/N=0.587(2sNe/N=0.02348)の集団についても同様です
N | u |
10 | 0.0619256392 |
20 | 0.0381021694 |
50 | 0.0256584096 |
100 | 0.0234203581 |
200 | 0.023208425 |
300 | 0.0232065073 |
400 | 0.0232064898 |
500 | 0.0232064897 |
600 | 0.0232064897 |
700 | 0.0232064897 |
800 | 0.0232064897 |
900 | 0.0232064897 |
1000 | 0.0232064897 |
1100 | 0.0232064897 |
1200 | 0.0232064897 |
1300 | 0.0232064897 |
1400 | 0.0232064897 |
1500 | 0.0232064897 |
1600 | 0.0232064897 |
1700 | 0.0232064897 |
1800 | 0.0232064897 |
1900 | 0.0232064897 |
2000 | 0.0232064897 |
この場合も.
Nが十分に大きければ,uは2sNe/N=0.02348で近似できますよね
ここで,k=2Nvu ─(1)の式に,
u=2sNe/Nを代入すると,
k=2Nv・(2sNe/N)
=4NesvN/N,
=4Nesv となるので,
前に説明した通り,有利な突然変異の置換率は,
集団の有効な大きさ,選択に対する有利さ,突然変異率の積で決まるんですよ
>>突然変異が中立であるなら淘汰係数s
>>(野生型対立遺伝子に対する有利さ)は0だと考えられるので
[神って誰さん]つまり、k=4Nesvにおいて、突然変異が中立であるなら、
s→0の極限値を取る訳で、
Nevは当然のことながら有限値な訳だから、
その場合k→0にしかならない。
そんな訳は無いね?
もちろん,そんなわけありません
突然変異が中立であるなら
k=4Nesv
ではなく,
k=v
になりますから
そもそもその説明を繰り返しやっていたわけなんですが,
内容をまったく理解してないから,
そんなトンチンカンな解釈が出てくるんですよね
[神って誰さん]ところでその数量を規定する条件は一体何なんだろう?
>>「率」という字の意味が「割合」だったり「確率」だったり
>>「変化の率」だったりで曖昧なので語の定義をうるさく言っても
>>仕方ないのですが,
>>「要するに,数値の意味は「DNA分子全体に対する突然変異の割合」でも
>>「突然変異が起こる確率」でもなく,
>> 「一世代当たりの突然変異の個数」だということです
>>例えば,ヒトゲノムが半数体で約30億塩基対ですから,
>>2倍体で約60億塩基対(6.0×10^9bp)あるDNA分子の中で,
>>0.1~0.5個の突然変異が一世代当たりに起こるという意味です
[神って誰さん]つまり数量を規定する条件、つまり単位は1個体と言う事か。
上の文章は
議論の発端となったMisoさんのカキコの「全ゲノムあたりの突然変異率」
を説明しているんですよ
この値を全ゲノムの塩基数で割れば,1塩基当たりの突然変異率になりますね
>>k=2Nv・(1/2N)=v ─(4)
>>この式は中立な突然変異の遺伝子置換率kは,
>>1遺伝子座あたりの突然変異率vと
>>等しくなるということを表しています
[神って誰さん]じゃなくて、1遺伝子座あたり、が単位?
ここではある突然変異の有利さによって置換率がどう変わるか
という説明をしています
突然変異の有利さは遺伝子座によって異なりますから,
「 1遺伝子座あたりの突然変異率」なんですよ
>>k=2Nev・2s=4Nesv
[神って誰さん]やっぱり有効集団数か?
その式は「突然変異が有利な場合は,kはNeにも比例する」,
ということを示していますが,
ミケさんの言う通り,神って誰さんは場合分けを全く理解していませんよね
[神って誰さん]一体どうすれば、整合性のある解釈が成立するのかしら。
どうすればも何も,
神って誰さんの理解が整合していないだけで既に説明されていることばかりですよ
[神って誰さん]単に突然変異率と言った時に規定する単位が無い
つまり前提条件が欠けてる、と言う事だ。
そして、それぞれ単位に規定された突然変異率は
明らかに比率なんだよ。
だから比率じゃないんだって,何度言えば分かるんですか?
突然変異率とは「単位時間あたりのたDNAの変化数量」です
単位時間は世代だったり年だったりしますが、
要はその単位時間の間に「全ゲノム」や「1遺伝視座」上で,
突然変異が何個起きたのか?ということです
神って誰さんは、時速(キロメートル毎時(km/h))や
仕事率(ジュール毎秒(J/s))などの単位も、
「明らかに比率」とか考えているのでしょうか?