Tadpoles: The Biology of Anuran Larvae
Tadpoles: The Biology of Anuran Larvae. Roy W. McDiarmid (著), Ronald Altig (著)
「カエルの幼生(オタマジャクシ)の生物学」の教科書です
約20年前,協力隊員としてボルネオ島で生態調査することになった時に購入しました
白黒ですがきれいな図版がたくさんあって非常に分かり易い良い本です
特に第7章の「Endotrophの発生と進化」が興味深く, 胎生,卵耐性,直接発生,留巣性などのEndotrophはいくつもの系統で独立に進化していることを示しています
endotroph種の卵のサイズは(通常のオタマジャクシ幼生のいる)Exotroph種よりも大きい傾向はありますね (それでも25%程度はオーバーラップしていますが……)基本的には「子どもにとって餌が得にくい環境」への適応なのでしょう
この本では,Exotroph種からEndotroph種への進化は "potential evolutionary and genetic mechanism" によって繰り返し起こったと述べていますね
確かに,Geocrinia属のように,直接発生する(卵からオタマジャクシではなく仔ガエルが生まれる)種(G. roseaなど)と 通常のオタマジャクシ幼生がある種(G. victorianaなど)を含む属もあるぐらいで, Endotroph種/Exotroph種の違いは系統関係は反映していないことが多いようです
ボルネオ産の種だと留巣性の種として,ヌマガエル科のRough Guardian Frog(Limnonectes finchi)が林床の落ち葉の裏に産みつけられた卵を雄が守り,生まれたオタマジャクシを雄が背負って水場まで運ぶ習性があります
直接発生する種としてはアオガエル科のPhilautus属(Bush frogの仲間)がいます
この仲間は海抜1000m以上の山地に棲息する種が多いのですが,私たちのタビン野生生物保護区(低地混交フタバガキ林,最高峰でも海抜570m)の調査でも,Bush frogの仲間(Philautus sp.)は確認されました(Shinokawa, T.,et al. (2002) J. Wildlife and Parks. 20: 95-101.)
ちなみに,アオガエル科には泡巣を作る種が多いのですが,Endotroph種への進化と違って,こちらは系統関係を反映していて泡巣形成は進化の過程で一度だけ起こったイベントのようですね(Grosjean. S,et al. (2008) )