害虫の誕生―虫からみた日本史 (ちくま新書)

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害虫の誕生―虫からみた日本史 (ちくま新書)

この本を読むと,
明治期の日本人が蚊や蝿を徹底的に排除すべき
『害虫』とは考えていなかったことが分かります
ラフカディオ・ハーンは,L・ O・ハワードの「蚊」を読んで,衛生害虫である「蚊」を知りながらも,
「蚊の根絶」に否定的で,日本人の「前世の行いで蚊に生まれ変わる」という信仰に共感しています(p.96-98)

また,ハエに関しても19世紀以前のほとんどの人々にとって「小さくてかわいらしい虫」でした
1865年にアメリカで出版された絵本では
「翅をブンブンいわせて歌う」ハエと赤ちゃんが楽しく遊ぶ様子が描かれています(p.117)

こうした見方を一変させたのは,細菌学の勃興と熱帯の戦場での感染症の蔓延ですね
具体的には,キューバとフィリピンの支配をめぐるアメリカースペイン間の戦争(1898〜)や第1次世界大戦で
特に,第1次大戦は病死者数が戦死者数を上回った最初の戦争だと言われています(p.117-118)
 

明治以降、日本の警察官は農地を見回り、苗がきちんと正条に植えられている等を監視するようになりました
「サーベル農法」と批判されることも多いのですが,
近代農法を定着させ収量を増大させたという意味では一定の効果はあったのだと思います

ある時期(明治末)まで警察学校には「昆虫学」の授業があり、
昆虫学者が昆虫学の基礎や害虫駆除について講義していたそうです
(警察の仕事として適当ではないという批判はありますが)
害虫駆除について一定の基礎知識を持った警察官が
農業害虫駆除の指導をしていた時代があったということです(p.84-85)